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労働紛争の予防

過労死、過労自殺

【1】典型的事例

飲食店Aは、午後15時から深夜5時までの営業時間で、従業員Bを店長として雇用していた。Bは、元々心臓に持病を持っており、通院歴もあったが、通常の店長と同様、週6勤務で、残業時間も月60時間~80時間程度行っていた。ある日、突然Bは自宅で倒れ、急性心不全で亡くなったが、後日、Bの妻(遺族)であるCから労災を申請したいからと言われ、資料の提供を行い、1年ほどかかって労災申請がおりた
ところが、労災が認定されているにもかかわらず、間もなく、Cの代理人と名乗る弁護士から、Bの死亡はAの安全配慮義務違反による過労死であるとして、8000万円の損害賠償を請求してきた

【2】事案の流れの整理

過労死、過労自殺発生後の流れ

過労死事件は、概ね以下のような時系列で進んでいきます。
①従業員の死亡
②労災申請(遺族→労基署)
③労災認定(労基署の判断)
④会社に対する損害賠償請求(遺族→会社)
⑤裁判上の和解 or 裁判所による判決

【3】なぜ遺族は③労災認定までだけではなく、④会社に対する賠償請求まで行うのか

労災保険による認定がおりているのであれば、補償を受けることができるわけですから、特段会社に対する賠償請求をする意味はなさそうにも思えます。しかしながら、近時、多くの遺族、特に弁護士がアドバイスをしているケースにおいては、かなりの確率で③の後に、会社に対する賠償請求を選択するケースがかなり増えています。 これはなぜでしょうか。それは一言でいえば、それは労災保険の補償が不十分だからです。 ではどういった部分が不十分なのでしょうか。 一番わかりやすいのは精神的損害(慰謝料)が労災では補償されていない、という点でしょう。この慰謝料の相場は、裁判例では概ね2500万円~3000万円が認められています。これほどの巨額の増額が望めるのであれば、弁護士費用などの追加負担を差し引いても会社を訴える動機としては十分でしょう。 そのほかにも、遅延損害金といった問題もありますし、労災では一時金を除いては遺族年金という形での分割支給となることや、ほかにも会社をあえて訴える動機というのは多々考えられます。 このように、労災認定を経てから会社を訴えるわけですから、まずはどういった場合に労災認定されるのかについて知る必要があります。

【4】過労死認定基準(「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」)

これは、労基署等の行政機関が、労災事故が発生した際に、労災と認めるか否かの認定基準になります。
細かい解説はさておき、概ね、
 ①発症直前に異常な出来事に遭遇したこと
 ②発症前1週間に特に過重な業務が課されたこと
 ③発症前6ヶ月程度で、1か月平均で概ね80時間を超える時間外労働が認められる場合
といった要件をもとに、業務上の災害であったのかどうかを判断するものとされています。
労基署が労災として認定するかを判断する際に、上記の3つの要素の中で最も重視するのが、③の時間外労働時間の長さです。

簡単にいえば、この時間外労働時間が、発症前6ヶ月間で1か月平均で80時間を超えると、労災として認められてしまうケースが多くなっています。
そうすると、その後、会社に対する損害賠償請求がなされるという流れになってしまうわけです。

【5】過労自殺(心理的負荷による精神障害の認定基準)

平成23年12月26日、「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23・12・26基発1226第1号)が定められました。
細かい解説はさておき、概ね、
 ①発病日から起算した直前の1か月間に概ね160時間を超える時間外労働を行った場合等には労災として認定される
 ②発病日から起算した直前の2か月間に1月当たり概ね120時間以上の時間外労働を行い、
  その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった場合等には労災として認定される
 ③恒常的な長時間労働の評価期間は、発病前おおむね6か月の間で、80時間を超える時間外労働が存在し、
  かつ強い心理的負荷となるような出来事があった場合には労災として認定される可能性がある
といったような理解となります。
認定基準が施行される以前の旧判断指針においても、労災認定されるかが微妙なラインとされていた時間外労働80時間前後の事案の取り扱いは、認定基準施行後においても個別事案ごとの判断とならざるを得ないのが実情です。
ただし、時間外労働が80時間を超えているような事案では、労災認定されるリスクが十分にあると考えるべきでしょう。

【6】実際に会社側に生じうるリスク

労災認定がなされ、その後会社に対して賠償請求がなされ、その後、遺族側との和解が成立しない場合は、8000万円から1億円を超える損害賠償が認められる判決が下されるケースが多いといえます(過失相殺を除く)。
(逸失利益、慰謝料、弁護士費用その他)
具体的な判例として2つあげておきます。

(1)康正産業事件(鹿児島地裁H22.2.16 労判1004-77)

【事例】
レストランの支配人が心室細動の発症によって低酸素脳症による完全痳痺となったことにつき,経営会社の安全配慮義務違反の損害賠償責任が認められた事例(発症当時30歳)。両親が24時間態勢で介護。発症直前に月100時間を超える時間外労働(直前1カ月176時間、2カ月200時間)。203日連続勤務

【賠償額】 約1億8000万円
・逸失利益 7250万
・後遺障害慰謝料2800万
・付添介護費用 1日1万2000円約11年間(親が67歳になるまで)3638万
・職業付添人付添介護 1日2万5000円(親が67歳以降) 8735万
上記から2割過失相殺
その後、弁護士費用1600万円を付加して、1億8129万円。

(2)天辻鋼球製作所事件(大阪地裁H20.4.28 労判970-66)

【事例】
職場を異動した直後の過重な業務(12日間の時間外労働61時間)と小脳出血及び水頭症の発症との間の因果関係を肯定した上,先天的な脳動脈奇形が発症に一定程度寄与したとして,20パーセントの素因減額を行った事例(発症時26歳)

【賠償額】 ※ 削除費目あり

治療関係費232万1843円
入院雑費96万9800円
入院付添看護費410万3000円
将来の介護費用1億0378万5487円
消耗品費607万1410円
家屋改造費等120万0000円
休業損害556万2140円
後遺障害逸失利益1億1022万1887円
入通院慰謝料400万0000円
後遺障害慰謝料2800万0000円
小計2億8151万5323円
- 素因減額20% 5430万3064円
+ 弁護士費用加算1700万0000円
遺族自身の慰謝料+α880万0000円
最終損害額1億9869万4235円
(3)事前の対応策

以上のような企業の経営を揺るがしかねない賠償義務を回避するために、一般的には以下のような対策が考えられます。
 ①何より労働安全衛生管理体制の整備をすること(健康診断の適正な実施と適切な指導、残業時間の適正な把握)
 ②労働災害総合保険への加入及び使用者賠償責任特約の付保
 ③団体保険等による弔慰金の充実及び災害補償規程の整備と適切な示談交渉

特に、過労死、過労自殺の問題に対応するには、どうしても②等の保険による対応が不可欠です。もっとも、保険に入るだけでも意味がなく、就業規則や諸規定等の綿密な整備が必要です。また、保険に加入したとしても、その保険金を実際にどのように使うかという部分も、紛争が発生するか否かという点では非常に重要な意味を持ってきます。
過労死の可能性のある死亡事案が発生した場合の初動は非常に重要です。弁護士法人レイズ・コンサルティング法律事務所(新宿区四谷)まで、早期のご相談をお薦め致します。

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